2014年5月31日土曜日

加速中のタンク内圧力

2014年3月に伊豆大島にて,自分が関わっているサークルで打上げた
ハイブリッドロケットの推力に対する考察の記事です.


伊豆大島での打上げでは某社のK240を使用しました.

赤が伊豆大島での打上げで取得した加速度から,F=maで計算した推力
青が地上燃焼試験にて取得した推力
緑が公称推力
を示します.


0秒は燃焼開始時刻を表しています.
また0秒前で赤のフライトデータは90 N程度が算出されています.
これは,打上げ前の重力加速度の影響がでているためのもので,
実際に90 Nが出ていたわけではありません.

この図より,緑の公称推力よりも,
赤のフライトデータと,青の地上燃焼試験でのデータは推力が少ない事が分かります.

また,赤のフライトデータでは,青の地上燃焼試験でのデータよりも燃焼時間が短いことが分かります.

フライトデータのほうが地上燃焼試験でのデータよりも燃焼時間が短いことは他の団体でも確認されているようです.


これについて考察します.

①赤のフライトデータでは,打上げ時にタンクから酸化剤が流出する方向に加速度が働きます.
これはだいたい3Gから4G程度なのですが,この加速度によって酸化剤の流量が増えたために,
燃焼時間が短くなったということが考えられます.

加速度による酸化剤の圧力上昇 は以下の式で表されます.

P = ρah

ここで,ρ は酸化剤の密度,a はロケットの加速度,h は酸化剤の水面までの高さとなります.
水頭圧と重力加速度がロケットの加速度に変わったと思うとわかりやすいと思います.

酸化剤(N2O)の密度は,沸点での値で1226 kg/m3
ロケットの加速度は40 m/s2
酸化剤の高さを0.5 mとすると,
圧力は

P = ρah = 24520 Pa = 0.02 MPa

となります.

酸化剤の温度の変化に対する蒸気圧は0.1 MPaオーダーであるため,
加速度によるタンク内の圧力上昇はそこまで支配的ではない可能性が考えられます.


となると,
酸化剤の温度の変化に対する蒸気圧の変化によって流量が変化したということでしょうか.

あとは,
③酸化剤がタンクに満充填されてなかったか.


とりあえず,加速中の圧力変化なんて微々たるものっぽいので,
それは関係ないってことが言いたいだけです.

飛翔中のタンク内圧力が計れれば一番良いのだけど...